新三井文庫の当初の陣容は、理事長に佐藤喜一郎、館長に柳川昇、主任研究員に中井信彦が就任し、このほか研究員4名(のちに5名に増員)、司書2名ならびに事務職員で構成された。その事業は、①旧三井文庫引継史料の整理と公開、②関係会社諸史料等の収集、③新たな「三井事業史」の執筆・刊行、④研究雑誌の発刊、⑤分類目録の作成、などにわたった。
現三井文庫の外観
昭和59年(1984)には、三井家伝来の美術品等の寄贈を受けて、文化史研究部門(三井文庫別館)を併設し、専門の学芸員等を置いた。翌年に開館式を挙行し、国宝・重要文化財などの名品を展示した「開館記念特別展」を開催した。その後、定期的に特別展を開催するとともに、日本美術の研究に取り組んだ。
同部門は平成17年(2005)10月に日本橋の三井本館に移転し、三井記念美術館が開設され、平成27年(2015)に10周年を迎えた。収蔵されている美術品は、日本・東洋の絵画・茶道具・工芸品が主で、江戸時代以来数百年におよぶ三井家の歴史のなかで収集され、今日まで伝えられた、日本でも有数の貴重な文化遺産である。
三井文庫は発足以来、文部省(文部科学省)から特に公益に資する機関としての認定を受けてきた(「特定公益増進法人」など)。
平成20年(2008)に公益法人制度改革三法が施行されたことにともない、三井文庫も法人としての形態を改めることになり、内閣府より公益財団法人の認定を受け、平成22年(2010)4月1日より法人名称を「公益財団法人三井文庫」に変更した。
所蔵史料の公開は業務の根幹の一つで、史料は整理でき次第、順次公開することを原則としている(寄託史料の一部などは非公開)。
史料公開の開始は、昭和41年2月15日で、この時点で閲覧可能だったものは、現在の「三井家記録文書」(本号、別号、続号、追号)の大部分(追号の後半部分は後に追加登録)と、旧三井文庫から引継いだ刊本・地図・錦絵などを含む参考図書類であった。また、それらに少し遅れて昭和43年11月から、「三井銀行会社資料」「三井物産会社資料」の、二史料群を公開した。その後に公開した史料を年代順に列記すると、次頁の表の通りである。なお、利用頻度の高い史料については、複製を作成し、原本の損傷を防いでいる。
所蔵史料の内容を紹介するために、適宜テーマを設定し、史料展示をおこなっている。これまで、以下の展示会を三井文庫内でおこなった。
第1回(昭和41年)「江戸時代の道中絵図」
第2回(昭和52年)「三井家の家法と家憲/三井家大元方の記録文書」
第3回(昭和55年)「近世三井家における記録文書の作成と保存」
第4回(昭和61年)「近世越後屋の奉公人史料展」
第5回(平成5年)「没後三百年 三井高利展」
なお、三井文庫の紹介のために昭和61年に「企業史料の宝庫」というタイトルのビデオを作成した。
史料名 | 公開年 |
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井上侯爵家より交附書類 | 昭和55年11月~ |
A番号資料 | 昭和55年11月~ |
川村貞次郎資料 | 昭和58年6月~ |
井上侯爵家より交附書類中の「書簡」 | 昭和59年6月~ |
特番号資料 | 昭和60年9月~ |
中井三郎兵衛家資料 | 昭和61年10月~ |
高陽文庫 | 昭和62年7月~ |
殊番号資料 | 昭和62年7月~ |
三井物産資料のうち諸帳簿類 | 昭和63年8月~ |
台湾糖業調査資料 | 昭和63年8月~ |
三井銀行追加資料 | 平成元年8月~ |
高陽文庫追加資料 | 平成元年8月~ |
三井物産資料のうち「業務総誌」など | 平成2年10月~ |
北三井家資料(新規寄贈分) | 平成3年11月~、平成14年11月 |
三井物産資料のうち「取締役会決議録」など | 平成4年10月~ |
三井物産契約書類 | 平成5年10月~、平成6年10月~、 平成7年10月~、平成8年10月~(4回に分割) |
新町三井家古記録 | 平成9年11月~ |
新町三井家資料 | 平成10年10月~ |
小石川三井家資料 | 平成11年10月~、平成12年10月~(2回に分割) |
南三井家資料 | 平成13年10月~ |
永坂町三井家資料 | 平成15年11月~ |
北三井家資料(旧三井文庫引継分) | 平成16年11月~、平成17年11月~(2回に分割) |
三井物産資料のうち「廻議綴」など | 平成18年11月~、平成19年11月~(2回に分割) |
戦前期海外経済調査資料 | 平成20年11月~ |
三井合名会社資料 | 平成21年11月~、平成22年11月~、平成23年11月~(3回に分割) |
三井総元方資料 | 平成24年11月~ |
三井本社資料 | 平成25年11月~、平成27年11月~(2回に分割) |
傘下会社資料 | 平成26年11月~ |