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炭鉱資材に関する資料の閲覧を振り返って

山口 明日香
炭鉱資材に関する資料の閲覧を振り返って
三井鉱山「資材購買ニ関スル座談会速記録」(鉱50稿本596)
炭鉱資材に関する資料の閲覧を振り返って

私が初めて三井文庫にうかがったのは今から10年程前で、大学院博士課程に在籍中であった。閲覧室に入る前に、受付におかれた名簿で様々な先生のお名前を目にするので、少しばかり緊張して閲覧室に入り、資料を閲覧させていただいていた。

その頃から私は、日本の産業化における木材利用をテーマに研究をすすめてきた。三井文庫では、炭鉱業における木材(坑木)利用を考察するために、三井鉱山の五十年史編纂資料と北海道炭礦汽船の五十年史および七十年史編纂資料(北炭社史編纂資料)を閲覧させていただいた。両社の社史編纂資料には、採炭・販売・職制・経理などの各課稿本のほか、統計や座談会速記録などの資料もふくまれている。これらの資料を利用して発表された研究は少なくないが、このうち私が利用させていただいたのは、資材に関する部分である。なかでも三井鉱山「資材購買ニ関スル座談会速記録」(鉱50稿本596)は印象に残っており、この資料によって、それまでに収集していた断片的な情報がパズルのようにつながり、当時の資材担当者たちの目を通した坑木調達の実態や資材調達の難しさを理解することができた。

こうした資料を利用して、「戦前期日本の炭鉱業における坑木調達」(『社会経済史学』73巻5号、2008年1月)と、「戦前期の北海道炭鉱業における坑木調達」(『三田学会雑誌』102巻2号、2009年7月)の論文をまとめることができた。なお、これらの資料には、木材だけでなく機械、火薬、さらに労働者の生活品関連の情報もふくまれているので、炭鉱経営に不可欠でありながら十分に解明がすすんでいない炭鉱資材の研究に、広く利用可能である。

(名古屋市立大学)

炭鉱資材に関する資料の閲覧を振り返って
三井鉱山「資材購買ニ関スル座談会速記録」(鉱50稿本596)
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