北海道の炭鉱史研究の原点となった北炭社史稿本
私が三井文庫に通うようになったのは、学部の卒業論文で北海道の炭鉱史を取り上げた時であった。大学院への進学を決意し、炭鉱企業の労使関係史を研究テーマに選んだが、当時は炭鉱史の研究対象が九州に偏り、驚くべきことに北海道の炭鉱史に関する研究はほとんどなされていなかった。これには色々な理由があったのだが、おそらくその最も大きな理由は、北海道の主要な炭鉱が中央から進出した財閥系の会社によって経営され、地元の社会との絆が弱く、資料が地元に残らなかったので、北海道の歴史研究者が本格的に研究に取り組めなかったことであろう。
北海道の炭鉱開発の中心となった北海道炭礦汽船株式会社の社史編纂資料はこの資料的問題を克服する役割を果たした。労務管理に関する上記の社史稿本は北海道の炭鉱の労使関係史研究の基本資料となり、このテーマに取り組む研究者に必ず使われるようになった。北海道の炭鉱史研究の進展は三井文庫と共にあったと言ってよい。
※この史料の閲覧には北海道炭礦汽船(株)の許可が必要です〔三井文庫注〕。
(獨協大学)