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三井銀行の史料について

浅井 良夫
三井銀行の史料について
三井銀行「取締役会議事録」
三井銀行の史料について

三井財閥については、私は一篇しか論文を書いていない。「一九二〇年代における三井銀行と三井財閥」『三井文庫論叢』第11号(1977年)である。今から、40年も前である。その後、研究分野を変えたために、財閥史とは縁遠くなってしまった。この間、経営史・経済史の研究は進展し、もはや私の論文には一片の価値もないだろう。しかし、この論文は、良質な史料に恵まれ、存分に研究ができた幸せな記憶とともに、今でも私の手元にある。

三井銀行の史料は、分量はそれほど多くないが、質は非常に高い。たとえば、私が調査したことがある安田銀行の場合には、膨大な史料は存在したが、大部分が支店から集めた史料であり、震災被害などのために本店の史料はわずかしか残っていなかった。それと較べると、三井銀行の場合は本店史料が中心で、一望のもとに三井銀行の経営が見渡せるという利点がある。三井銀行の史料の主要部分は、1978年に『三井銀行史料』(全6巻、日本経営史研究所)として刊行された。しかし、私が三井銀行の研究をしていた頃は、『三井銀行史料』がまだ刊行されていなかったので、三井銀行調査部に通って見せて頂いた。金融史に造詣の深い三井銀行の後藤新一氏、大谷明史氏には、大変にお世話になった。

三井銀行の史料のうちで、とりわけ役立ったのは、「事業別貸出金調」、「三井関係会社ノ取引状況調」、「業況報告」などである。しかし、これらの史料は『三井銀行史料』に収録済みであるので、それ以外の史料から一点を選ぶとすれば、「取締役会議事録」(明治42年~昭和18年、全46冊)になる。三井銀行の経営トップの意思決定が一覧できる一級史料であるが、私は、社債引き受け状況などを調べるのに活用した。

三井銀行の史料は、現在では、三井文庫に寄託されており、閲覧可能とのことである。三井銀行の史料が、さらに活用され、新たな成果が生まれることを期待したい。

※ 閲覧には(株)三井住友銀行の許可が必要です。なお、三井文庫には、当該寄託史料とは別に「銀行」と分類される三井銀行関係史料群が所蔵されています〔三井文庫注〕。

(成城大学)

三井銀行の史料について
三井銀行「取締役会議事録」
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