私の一点・現行達令類集
三井物産を研究対象としている私にとって、三井文庫の所蔵する同社の史料群は、大変に重要なものである。中でも「支店長会議議事録」や「事業報告書」などは、その重要性とともに、これ自体がまとまった史料群となっている点で有用であるが、これらの資料については、恐らくどなたかが触れることになるのだろう。
私が、今回の企画で選ばせて頂いた史料は「現行達令類集」である。この史料も、右記の二史料などとともに三井物産の基本資料であり、私が触れるまでもないものかもしれないが、私個人としては、三井物産の為替組織を研究する際、支店の為替取扱も含んだ全体像をつかむのに、まず参考になった。為替に関する史料はそれほど多くない。その意味でこの史料は、私にとって特別な意味を持つ。「現行達令類集」はいくつかの版があり、「支店長会議議事録」「事業報告書」、あるいはその他の重要な史料同様、これ自体まとまった史料群と言っても良いだろう。そして、各版に記載されている各規程の改正時期をたどれば、諸規程がいかに変化したかの、大まかな時系列とともに流れをつかむことができる。そのことが私の関心事である為替組織や業務内容の変遷をつかむのに好都合であったのだが、同様のことは、他の組織、他の業務についても言えると思う。支店組織を含む三井物産の全体的な組織や業務変遷の、大きな流れを把握することができる点で、有用な史料であると考えている。
(愛知学泉大学)