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伊勢参詣曼荼羅との関わり

清水 実
伊勢参詣曼荼羅との関わり
伊勢両宮之図(画一)外宮図
伊勢参詣曼荼羅との関わり
伊勢両宮之図(画一)内宮図

三井文庫本館所管の資料のなかで、私にとって三井家の茶道具と紀州御庭焼の研究における『高祐日記』の存在も大きいのであるが、別稿に取り上げられているので、ここでは私のライフワークとしている神仏習合美術研究での伊勢参詣曼荼羅を取り上げることとする。

この曼荼羅は、三井文庫では「伊勢両宮之図」として二幅の掛軸で伝わり、箱書には万延元年に京本店が入手し、職方の伊勢講「三永講」に寄贈されたものとある。この曼荼羅を、神宮徴古館所蔵本とジョン・パワーズ所蔵本の伊勢参詣曼荼羅と比較して、それぞれの制作年代を考察し、論文にまとめたのが『三井文庫本「伊勢参詣曼荼羅」の制作年代について-神宮徴古館本とJ・パワーズ本との比較による-』であった。

この論文は、私の出身校である國學院大學の神道史学会が発行する『神道及び神道史』の55・56合併号(平成12年8月発行)に掲載したが、思いがけなく『東京大学史料編纂所附属画像史料解析センター通信』の文献案内で、黒田日出男氏の書評が掲載され、嬉しかったことを覚えている。その後、この論文がきっかけとなって、平成14年に開設された國學院大學神道文化学部で、神道芸術研究・宗教芸術研究の兼任講師を引き受けることとなり現在に至るが、私の人生においてこの論文は大きな意味を持った。

しかし、掲載誌である『神道及び神道史』が、美術研究の専門誌ではないところから、図版が思うように掲載できなかったことと、美術史の研究者にはほとんど知られることがなかったのが心残りであったが、ちょうど伊勢神宮の式年遷宮の年でもあった平成25年に、三井記念美術館の研究紀要である『三井美術文化史論集』の第7号において、この論文を豊富な図版を加えて再録することができた。三井文庫の「伊勢両宮図」は私の「こだわりの一点」でもある。

(三井記念美術館学芸部長)

伊勢参詣曼荼羅との関わり
伊勢両宮之図(画一)外宮図
伊勢参詣曼荼羅との関わり
伊勢両宮之図(画一)内宮図