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台湾製糖株式会社関連史料との最初の出逢い

久保 文克
台湾製糖株式会社関連史料との最初の出逢い
台湾製糖関係書類(物産274所収)
台湾製糖株式会社関連史料との最初の出逢い

大学院に進学し、近代製糖業研究の最初に台湾製糖(以下、株式会社は省略)を選んだものの、社史の裏付けとなった内部史料が台湾でも見つからず、どうしようかと途方に暮れていました。そうした中、一手販売契約であれば、三井物産側にも契約書が残っているのではないか?そうした思いで向かったのが三井文庫でした。

予想通り三井物産との一手販売「契約書」(物産274所収の台湾製糖関係書類の内)は文庫に存在し、台湾製糖に関連するオリジナル史料を初めて見ることができたのでした。後に、台湾製糖を戦後引き継いだ台糖の社史編纂室に大量の内部資料が保管され、その中にまったく同じ「契約書」の台湾製糖側所蔵分を確認することになりました。

『台湾製糖株式会社史』所収の写真では一部見てはいたものの、墨字の原本を見たことのなかった前期課程1年の私には感動そのものであり、経営史研究の醍醐味を初めて味わった瞬間をつい昨日のように思い出します。勝手がわからず恐る恐る史料請求をした記憶とともに、数え切れない史料を目の当たりにした文庫との最初の出逢いが走馬燈のように思い出されますが、今日に至る近代製糖業の経営史的研究の方向性を定めてくれたと言っても過言ではないほど、私の研究者人生にとって大きな意味を持ったのでした。

しばらくして訪れた旧糖業会館地下において、大量の糖業連合会内部史料との出逢いを経験し、その整理と目録作成に10年以上の歳月を費やすこととになりますが、請求番号を書いて申請すれば史料が閲覧できる文庫の環境がいかにありがたいものか、院生当時の私には理解できなかったのも事実です。史料が存在し続けること、その閲覧が容易にできることがいかに恵まれたことか、あらためて痛感した次第です。

(中央大学商学部教授)

台湾製糖株式会社関連史料との最初の出逢い
台湾製糖関係書類(物産274所収)
台湾製糖株式会社関連史料との最初の出逢い